太陽光発電10年で売電終了|卒FIT後の3つの選択肢と損しない活用法【2026年版】

太陽光発電の「10年」が終わるとどうなるのか

太陽光発電を設置した多くの家庭では、FIT(固定価格買取制度)によって10年間、決まった価格で電力を売電できます。しかしその10年が過ぎると、売電価格は大幅に下がります。「知らなかった」と慌てないために、FIT期間終了後に何が起きるのかをあらかじめ把握しておくことが重要です。

FIT制度の仕組みと10年間の買取保証

FIT(固定価格買取制度)は2012年7月に始まった制度で、住宅用(10kW未満)の太陽光発電については余剰電力を10年間、固定価格で買い取ることを保証するものです。

資源エネルギー庁の調達価格等算定委員会が発表してきた住宅用の買取価格は年々下落してきました。制度が始まった2012年度には42円/kWhだった買取価格は、その後段階的に引き下げられ、2021年度には19円/kWh、2022年度は17円/kWh、2023年度・2024年度は16円/kWhとなっています。

制度開始直後に設置した家庭の多くは、すでにFIT期間の10年を終えています。2012〜2015年ごろに設置した住宅は現在「卒FIT」の状態にあり、今後も毎年、多くの家庭がFIT期間を終えていきます。

(出典: 資源エネルギー庁 調達価格等算定委員会)

売電終了後の買取価格はどこまで下がるのか

FIT期間(10年)が終了しても、太陽光パネルは発電を続けます。ただし、FIT期間中のような「保証価格」での売電は自動的には継続されません。電力会社への申し込みが必要で、その際の買取価格は各社・時期によって異なりますが、目安として7〜9円/kWh程度と大幅に低下します。

2024年度のFIT買取価格(住宅用)が16円/kWhだったことを考えると、卒FIT後の買取価格は半分以下になる計算です。同じ電力量を売電しても、得られる収入が大きく減るため、売電一本やりでは費用対効果が薄くなります。

この現実を受け止め、卒FIT後の電力活用を戦略的に考えることが、太陽光発電の「第2章」を有意義にするカギになります。


卒FIT後の3つの選択肢を徹底比較

卒FIT後の活用方法は大きく3つに分かれます。それぞれのメリット・デメリットを整理します。

選択肢①:電力会社への売電を継続する(最もシンプルな方法)

FIT期間終了後も、引き続き電力会社に余剰電力を売電するルートが最もシンプルな方法です。特に新たな機器の設置費用が不要なため、初期コストはかかりません。

ただし前述のように、買取価格は7〜9円/kWh程度に低下します。FIT期間中に得ていた売電収入と比較すると、同じ電力量でも年間の収入は大きく減少します。

電力会社への申し込みは自動継続ではなく、FIT期間終了前に手続きが必要です。大手電力会社のほか、新電力各社も買い取りを行っているため、複数の会社の条件を比較してから申し込むことをおすすめします。

こんな人に向いている

  • 蓄電池の購入費用を今すぐ出せない
  • 電気自動車(EV)を持っていない、または導入予定がない
  • まずは手間なく運用を続けたい

選択肢②:蓄電池を導入して自家消費率を高める(最も経済合理性が高い場合も)

2つ目の選択肢は、家庭用蓄電池を導入して太陽光で発電した電力を自宅で使い切るという方法です。

昼間に太陽光で発電した電力を蓄電池に貯め、夜間に使用することで、電力会社からの電力購入量を減らせます。電気代が高騰している現在、自家消費の経済的価値は以前より高まっています。

家庭用蓄電池の費用目安は、容量によって異なります。

容量費用目安(工事費込み)
小容量(5〜7kWh)約80〜120万円
中容量(8〜10kWh)約120〜200万円

蓄電池の寿命は一般的に10〜15年とされており、長期的な経済効果と比較しながら投資判断を行う必要があります。また、停電時にも一定時間の電力を確保できる防災面のメリットも無視できません。

国の補助金の活用も重要なポイントです。 2026年度は「みらいエコ住宅2026事業」が実施されており、蓄電池を含む設備導入が補助対象となる場合があります。補助額・要件は予算状況や申請時期により変動するため、経済産業省・国土交通省の公式サイトで最新情報を事前に確認しましょう。

自治体の補助金も合わせて活用すれば、実質的な導入費用を数万円から30万円程度抑えられるケースもあります。

こんな人に向いている

  • 夜間の電気使用量が多い
  • 電気代をできるだけ減らしたい
  • 停電・災害時の備えを強化したい

選択肢③:V2H(電気自動車×太陽光)で「走る蓄電池」を活用する

3つ目は、電気自動車(EV)と太陽光発電を組み合わせるV2H(Vehicle to Home)という方法です。EVの大容量バッテリー(多くの車種で40〜80kWh)を家庭の電力として活用できる仕組みで、蓄電池よりもはるかに大きな容量を持てることが最大の特徴です。

V2H機器の費用は約50〜100万円(工事費込み)ですが、対応するEVが別途必要になります。太陽光で発電した電力をEVに充電し、夜間や停電時に自宅で使うという運用が可能です。

ただし、対応EVの車種が限られることや、充放電の繰り返しによるバッテリー劣化への影響など、考慮すべき点もあります。すでにEVを保有している、あるいは次の車の買い替えでEV導入を検討している家庭に特に向いています。

こんな人に向いている

  • すでにEVを保有、または近く購入予定
  • 大容量の電力を夜間も使いたい
  • 停電時に家電を長時間使いたい


2025年10月以降のFIT制度と今後の展望

「初期投資支援スキーム」で買取価格が大きく変わった

2025年10月から、住宅用・屋根設置型太陽光発電のFIT制度に**「初期投資支援スキーム」**が導入されました。これは従来の固定単価制度から大きく変わる制度改正です。

従来は1〜10年目を通じて同一価格で買い取る方式でしたが、新スキームでは次のような2段階の買取価格が設定されています。

FIT期間買取価格(2026年度継続)
1〜4年目24円/kWh
5〜10年目8.3円/kWh

買取期間は従来通り合計10年間です。前半4年間を24円という高い価格で買い取ることで、初期費用の早期回収を支援する設計になっています。

2026年度も同スキームが継続して適用されているため、今から太陽光発電を新規導入する場合はこの2段階制度が適用されます。

この変更は、これまでの「売電単価を少しずつ下げてきた」流れとは性格が異なります。導入初期の回収を加速させる一方、後半5〜10年目の売電価格は8.3円/kWhと卒FIT後の相場に近い水準になるため、後半から蓄電池への切り替えを見据えた設計が重要になります。

(出典: 資源エネルギー庁 再生可能エネルギー固定価格買取制度 調達価格等算定委員会)

電気代の高騰と再エネ賦課金の動向

太陽光発電の経済メリットを左右する要素の一つが電気代の動向です。電気代を構成する「再エネ賦課金」(再生可能エネルギー発電促進賦課金)の単価は、資源エネルギー庁の発表によれば近年上昇傾向にあります。

年度再エネ賦課金(円/kWh)月間負担目安(400kWh使用)
2022年度3.45円
2023年度1.40円
2024年度3.49円約1,396円
2025年度3.98円約1,592円
2026年度4.18円約1,672円

2023年度は特例的に低額でしたが、2024年度以降は再び上昇し、2026年度には4.18円/kWhに達しています。標準的な家庭(月間400kWh使用・政府公式基準)で見ると、再エネ賦課金だけで月約1,672円、年間で約2万円の負担になります。

(出典: 資源エネルギー庁 再生可能エネルギー発電促進賦課金)

この賦課金の上昇は、言い換えれば「自家消費の価値が上がっている」ことを意味します。太陽光で発電した電力を自宅で使えば、賦課金を含む電気代を丸ごと節約できるためです。卒FIT後に蓄電池や自家消費強化を検討する理由の一つとして、電気代の構造的な上昇があります。

東京エリアの太陽光発電比率が示すもの

東京電力パワーグリッドのでんき予報(エリア需給実績)によると、東京エリアの太陽光発電比率は2026年5月に14.34%に達しています。同年4月は12.32%、7月は9.25%と、春に高く夏・冬に低くなる季節変動が顕著です。

これは、太陽光発電がすでに電力供給の主要な担い手となりつつあることを示しています。全国レベルでは、資源エネルギー庁のデータによれば2024年12月末時点の実導入量は約75.6GWに達しており、毎年5GW前後のペースで増加しています。

(出典: 東京電力パワーグリッド でんき予報(エリア需給実績)、資源エネルギー庁「なっとく!再生可能エネルギー」)


「卒FIT前後」に確認すべき行動チェックリスト

卒FITを迎える前後に何をすべきか、実践的な手順を整理します。

FIT期間終了の1年前〜半年前に確認すること

① 自分のFIT終了時期を確認する

FIT申請時に受け取った書類(交付通知書や売電契約書)にFIT期間の開始日・終了日が記載されています。手元に書類がない場合は、売電契約を結んでいる電力会社またはFIT申請窓口に問い合わせてください。

② 現在の売電収入と電気代を把握する

毎月の売電金額と電気料金を把握しておくことで、卒FIT後の収支シミュレーションができます。電力会社から届く「買取明細書」と「電気料金明細書」をセットで確認しましょう。

③ 3つの選択肢を比較検討する

売電継続・蓄電池導入・V2H導入のいずれかを選ぶにあたり、家庭の電力使用パターン(昼間に人がいるか、夜間の消費量はどれくらいか)を確認することが重要です。

FIT終了の3〜6ヶ月前にやること

④ 複数の蓄電池・V2H業者から見積りを取る

蓄電池は同じ製品・容量でも業者によって価格が大きく異なります。複数の見積りを比較することで、費用を適正に抑えられる場合があります。

⑤ 国・自治体の補助金申請期限を確認する

みらいエコ住宅2026事業など国の補助金には申請期限・予算上限があります。年度をまたいで申請できない場合もあるため、補助金の受付状況を各省庁の公式サイトで事前に確認しましょう。

⑥ 卒FIT後の売電申し込み手続きを行う

FIT終了後に電力会社に売電を継続する場合、申し込みは自動ではなく手続きが必要です。終了直前に慌てないよう、数ヶ月前から準備を始めることをおすすめします。


今から新規導入を検討している人へ

卒FIT後の話は、これから太陽光発電を設置しようとしている人にとっても他人事ではありません。新規導入の場合、2026年度以降は「初期投資支援スキーム」が適用され、1〜4年目は24円/kWh、5〜10年目は8.3円/kWhの2段階制度になります。

前半4年間で初期費用を積極的に回収できる制度設計になっている一方、10年後(卒FIT後)の活用計画も最初から考慮しておくことが賢明です。

設置費用と回収年数の目安

JEPAや住宅会社の調査に基づく費用目安(工事費込み)は次のとおりです。

システム容量費用目安
3kW約75〜105万円
4kW約100〜140万円
5kW約125〜175万円

1kWあたりの設置費用目安は25〜35万円(2024年時点)です。補助金なしでFIT売電+自家消費を組み合わせた場合、投資回収年数の一般的な目安は10〜15年とされています。電気代の高騰や自家消費率の向上により、回収期間が短くなるケースもありますが、地域・設置条件・電気使用量によって大きく異なるため、個別のシミュレーションが重要です。

まず複数の業者から見積りを取ることが第一歩

太陽光発電の費用は、施工会社・パネルメーカー・屋根形状・地域などによって大きく変わります。同じ条件でも、複数の業者から見積りを取ることで適正な費用感をつかむことができます。


※本記事の情報は2026年時点のデータに基づきます。最新の費用・補助金・FIT売電価格は各省庁・各事業者の公式サイトでご確認ください。

データ出典

※本記事のデータは政府統計・公表資料に基づきます。最新情報は各省庁・公式サイトでご確認ください。